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人生フルーツ



映画2017/01/02

監督 伏原健之
音楽 村井秀清
ナレーション 樹木希林

(内容)

津端修一 90歳、
妻・英子 87歳。

愛知県春日井市の
高蔵寺ニュータウンで、
雑木林に囲まれた平屋に住む
建築家夫婦の日常を追ったドキュメンタリー。

-修一は海軍技術士官として
厚木飛行場に赴任。
終戦後に東大へ再入学。

ヨット部の合宿で
宿泊していたのが英子の実家の蔵だった。
のちに2人は結婚。子宝にも恵まれた。

東大卒業後は
日本住宅公団のエースとなった修一。
数々の団地を設計した。

1960年代、
彼は風の通り道となる雑木林を残し、
自然との共生を目指した
高蔵寺ニュータウンを計画したが、
経済優先の時代により
理想とはほど遠いものになってしまった。

彼はその一角に土地を購入し、
師であるアントニン・レーモンドの自宅を模倣した
家を建て、雑木林を育て始めた。
週末は家族で専用のヨットに乗って
海上で過ごした。

その後大学教授などを経て、
50年が経った現在。

英子はその土地で
70種の野菜と50種の果実を育て、
それを使った料理で
長い間修一を支えていた。
刺繍も編み物も機織りも
何でも自分でこなす英子。
必要最低限のものしか買わず、
自家製のものしか食べない。

夫にいいことをすれば
それが家庭に回って
自分の幸せになって返って来る、という信念を持つ英子。

家は、暮らしの宝石箱でなくてはいけない。
-ル・コルビュジエ

(感想)

風が吹けば、
枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、
土が肥える。
土が肥えれば、
果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生、フルーツ。


作品中に、
ナレーションの希林によって
何度も登場する言葉。

冒頭からその潤沢な時間に
悔しくなる。
2人の穏やかな時間は
それまで
「時をためるくらし」をしてきたからこそ出来ることで、
47歳になろうとする自分が
今からこんな生活を送る準備を始めるのは
しんどく、もう遅いだろうな、と感じるから。

印象的なことを羅列する。

・2人のシャキシャキとした動きと、
活き活きしている姿勢。

・英子が修一を
「お父さん」と呼んでも返事をしなかったのに、
「修ちゃん」と呼んだ途端に返事をするところが
微笑ましかったり。

・2人は決してお互いを否定しない。
後ろ向きな発言をしない。
なかなか出来ないことだ。

英子の
旧式だが賢明な信念はきちんと肯定されている。

・フィールドには
修一の手作りで
手書きの絵と言葉が添えられた札がそこかしこに。
文字も、書かれている言葉も
デザインも、味があってかわいい。素敵だ。

・その感じで、
英子が長いこと贔屓にしている店にも
「おいしかったです」みたいなことを書いた
葉書を出していて凄いな、と。
貰ったら嬉しいだろうな。

・英子の料理は
おかずもデザートも
本当においしそう。
何でも作っちゃう。
メニューが
ちっともババアくさくないところが凄い。
収納上手でもある。

・修一は和食、英子は洋食。
お互いに好きなものを食べている距離感がいい。

・日本住宅公団時代の同僚の話から
修一の天才系職人型の気質がわかる。

・台湾で夫妻の本が出版されることになり、
現地を訪れる2人。

修一は戦時中に友人となった
台湾人の同僚が
戦犯として処刑されていたことを最近知り、
彼の墓を訪ねた。

彼がプレゼントしてくれて、
ずっと使っていた印鑑を墓前に埋めて泣く。

このシーンだけ毛色が違ってシリアス。
そして、修一の長い人生を窺える重要な箇所だ。

・幼い孫娘へ手作りのドールハウスを製作した修一。
これがゴージャス。
既成のおもちゃを完全に負かしている。

その孫娘が大学を卒業し、嬉々としてお祝いに出向く。
(孫娘は登場しない)

子供の頃は既成のおもちゃが欲しいものだが、
2人の孫なのでそんなふうに成長していない、はず。

・修一、昼寝中に急死。
本当に唐突に、淡々と映される。
死は生活の延長線上にあることを感じる。

結構長い時間映される死に顔は
ショッキングではある。

口が開いたその顔は
気負いなく昼寝している顔そのもののような、
空っぽで魂がないような。
でも、デスマスク特有の
怒りや苦しみのような表情は全くない。
自分がこれまで見た中で、一番平和な死に顔だった。

これはなんとなく
英子の作る食事が良かったからのような気がした。

修一に語りかける英子の様子が悲しい。

・夫の死後も
同じように生きようとする英子。

修一がやっていた
襖の張り替えに挑戦。

やっぱり
男が先に死んだほうがいいのかも。

だが、台風で木が折れてしまい、
近所への迷惑を考えて切ることに。
修一の焼いた水窯も割れてしまった。

夫唱婦随だった英子の困惑と淋しさがわかる。

このあたりは
我が家も父が亡くなった時に
似たような経験をしたなぁ。

・年金がいっぱい貰えていて、いいねw

・修一は佐賀佐賀県伊万里市に建設中の
精神病院「山のサナーレ・クリニック」のデザインに
無償でアイデアを提供していた。
「これが人生最後の仕事だ」と意気揚々としていた。
自転車に乗る修一はとても90歳とは思えない元気さ。

そのスタッフが訃報を聞き
焼香に来た。

修一はずっと提唱していた
風の通り道となる雑木林のデザインを薦めた。
自分たち夫婦が実践してきた暮らしを送れるような
設備も作られた。

完成は見られなかったが、
経済優先社会で疲れて病んだ患者も
きっとここで癒されるに違いない、とスタッフ。
用意周到な仕事ぶりも明かされる。

自分が死んだ後も
自分の仕事が存在として残る、というのは素敵だ。

・水窯は娘が治した。
収穫を収納。
英子の生活は続く。


基本的に周りの年寄りを見て、
「年寄りって嫌だなぁ」って思っている自分なんだけど、
こんなふうに
憧れる暮らしをしている人たちもいるんだなぁ。
もう一度周りの年寄りを見直したら
きっと違った気持ちになるかも知れないな、と思った。

知性や教養や持って生まれた感性、
そういうものが自分とは全く違うな、と…
こういうセンスとアイデアを持ち合わせない
自分の脳の凡人ぶりに悲しくなった(笑)
とっても羨ましい。

英子さんにはずっと元気でいてもらいたいな。
食堂をやってくれたらいいのに。
料理、食べてみたい。

好企画。
いいものを見せてくれてありがとう。

映画オフィシャル・サイト


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